
私の着物はほとんどが着物好きだった祖母から受け継いだものか、まだお嫁に行く前の母のために祖母が誂えたもので、自分で購入した着物は夏用の明石縮1枚のみです。
昔の着物は生地がしっかりしている上に職人さんが手作業で作り上げているため、現代の機械で作った着物と比べるとそのクオリティの差は歴然で、こればっかりは昔の物の方が素敵だなと個人的には感じます。一方でネットを見ていると、着物を受け継ぐことへのお悩みも多く見かけるので、受け継ぐとしたらどんな着物なら今でも違和感なく着れるのか、昔の着物を今っぽく着こなすためのワンポイントアドバイスなどをご紹介します。
時代感が出やすい着物とそうでないもの
色無地や紬と比較すると、小紋や付け下げは柄に時代感が出てしまう物も少なくないと思います。例えば母から受け継いだ下の写真のような着物はいかにも「昔の着物」っぽくて、これは実は一度しか着ていません。。
同じように昔ながらの柄だと下の小紋も同様ですが、こちらの方が「レトロ風」に今っぽくも着れるかもしれませんね。20代くらいまでだと可愛らしく着れると思いますが、長く楽しめるデザインではないかもしれません。
柄で時代感が出やすいのは付け下げも同様で、下の写真の付け下げは結構昭和感が出ているなと感じます。
一方で、今着ても全く違和感のない柄もたくさんありますので、小紋や付け下げは柄次第というところでしょうか。下の数枚の写真はどれも母から譲り受けた着物を仕立て直し、何度も着ている着物たちです。
上は小紋、下は付け下げです。小紋の方は少し光沢感のある生地で、何十年も前の物とは思えないほど可愛いデザインでお気に入りです。下の付け下げは絞りの加工が入っており、サーモンピンクの色合いが素晴らしい着物です。昔ならではの職人技術が使われている着物ですが、時代感は全く感じず、とても大事にしている1枚です。
柄ものの着物の中でも、比較的時代を感じさせないのは紬かなと思います。紬は着物好きの間でもファンが多いので有名で、職人技術が光る着物です。しかし中でも一番高価と言われる大島紬は、残念ながら職人の数が年々減っていて、その伝統技術が途絶えてしまう危機にあると聞きました。
上下の写真ともに確か結城紬だったと思いますが、どちらも時代感は感じないですよね。(上は母の着物を直さず着たので袖丈が短いですが…)
下の写真は大島紬で、数年前のお正月に真っ赤な帯と合わせて着ました。上2つのパステル調の紬と比べると少し「姉御感」が出る感じもします。。
この下も大島紬です。紬は柄よりも色合いで「おばさんっぽい」感じが出てしまうことがあるので、その点は要注意かもしれません。。これは祖母から譲り受けた着物ですが、完全に早まったなと思いました。大島紬のように落ち着いたブルーや濃紺などを基調とした着物は50代を過ぎてから着た方がしっくりくるだろうなと思います。
ここまでは柄ものの着物を紹介しましたが、時代感が出にくいという点では色無地や鮫小紋のような単色の着物が圧倒的にオススメです。
上は鮫小紋、下は色無地の着物です。単色の着物は、その色自体がご自身に合っていればあとは帯で色々と工夫ができますので、とても便利で使い勝手が良いです。小紋や付け下げのように柄ものならではの煩わしさもないですし、一方で小紋や付け下げよりも活躍シーンも多いですので、受け継げる着物の中にこれらの着物が入っていたら、迷わず選ぶのがオススメです!
昔の着物を今っぽく着こなすポイント
帯
昔と今で大きく変わっているものの1つとして、帯の柄があげられます。もちろん昔の帯でも素敵なデザインはたくさんありますが、例えば下の写真のような袋帯のデザインは最近なかなか見かけませんね。
この帯を下のような帯に変えるだけで、同じ着物を着てもガラリと雰囲気が変わります。帯は着物と同じくらい(時にはそれ以上)の存在感がありますので、着物のみを譲り受けて帯は新調するというのも選択肢の1つではないかと思います。
同じ赤い鮫小紋で、帯を変えて着回しているのが下2枚の写真です。上は母から譲り受けた名古屋帯、下は数年前に購入した名古屋帯です。上の帯も色合いが素敵で気に入っていますが、下の帯の方が今っぽいデザインかなと思います。
最近の帯は下の写真のように光沢を抑えたシルバーや淡い色をベースにし、柄はパステルカラー調のものが多いようです。おそらく何の着物にも合わせやすいからということかなと思います。
草履
意外と侮れないのが草履です。デザインもさることながら、草履はどんどん機能がよくなっていますので、買い替えるのがオススメです。フラットで硬い昔の草履に比べて、最近は下の写真のように真綿が入ってクッション性の高い草履もあり、疲れづらく作られています。(鼻緒にも時代感は結構出る気がします…)
その他の小物
色々買い替えるのはお金もかかるし面倒、という方には、帯揚げや帯締めなどの小物を買い替えるのもオススメです。昔の帯締めは単色で紐もフラットな作りが多いですが、最近はバイカラーで厚みのあるデザインも多く、これを変えるだけでも雰囲気が結構変わります。
上は祖母から譲り受けたピンクの帯締め、下は数年前に購入したバイカラーの帯締めです。
帯揚げも呉服屋さんでセールになって売っていたりしますので、比較的手軽に購入できると思います。帯から少し顔を出す程度の帯揚げですが、帯揚げ・帯締めを変えると思いの外印象が変わります。
あとはヘアアクセサリーなんかも使って、ヘアスタイルで工夫するのも良いですよね。シニヨンヘアは手軽に出来る上に着物にもマッチするので、オススメです。
いかがでしたか?
私にたくさんの着物を残してくれた祖母も、昨年夏の終わりにとうとう他界してしまいました。生前から変わらず今も着物に袖を通すたびに祖母を思い出しますし、不思議と祖母を近くに感じて安心します。
親から子へ着物を引き継ぐなんていうことは、おそらくあともう少し経つと完全になくなってしまう習慣なんだろうと感じます。これも時代の流れなので仕方ないと思う一方、着物は大事にすれば本当に何十年でも何世代でも着ていけるものですので、チャンスがあればぜひ1枚でも受け継いで、そこに新しいエッセンスを加えて楽しんでいただけたらなと思います。
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