
着付け教室が色々あるように、着付けの仕方も結構人によってマチマチですよね。今の流行りは「シワなく凛とした佇まい」が着付けのベースにある気がしますが、呉服屋さんや祖母の世代の人と話しをしていると「あんまりガチガチに着るのはちょっとねぇ」というような意見も多く、着付け一つをとっても考えさせられます。
そもそも、着付けに正解ってあるのでしょうか?
こんなに違う着付けの仕方
私は個人の着付け教室で着付けを習得しましたが、ネットで着付けの動画を見たりしていると結構人によってやり方が違うのだなと感じます。少し例をあげてみます。
半衿は耳元からしっかり出す派 vs. 耳元は揃えて首元は少し出す派
これは最近のトレンドとしては一番大きな違いかもしれないですね。従来の着付け教室で習うと、半衿は「耳元は揃えて首元に向けて1〜1.5cm程度出していく」とか教わることが多いと思うのですが、最近は半衿をたっぷり出すのが流行りですね。ネットでも「半衿 たっぷり出す方法」というキーワードとかで調べられているみたいです。
極端な例ですが、美智子さまのお着物姿を見ると半衿は控え目に出している程度ですが、着物好きで知られるIKKOさんの半衿は見事な出しっぷりです。
衣紋はしっかり抜く派 vs. こぶし半分〜1個程度で抑える派
インスタの着物写真を見ていると、これも結構2分しますよね。若い女性は比較的しっかり抜いている方が多いようで、たまに「昔だったら玄人さん」ぐらいたっぷり抜いている方も見ます。
従来の着物教室では「こぶし半分〜1個程度」と教わるのが一般的のように思いますが、最近は着物を新しいスタイルで着る女子たちも増え、コーディネートに応じて衣紋の抜き方も変えたりしているのかもしれません。
紐派 vs. ベルト派
長襦袢や着物をとめる方法も、紐派とベルト派と2分すると思いますが、最近は便利なベルトグッズが増えてきたのでベルト派の方が多いかもしれませんね。
伊達締めする派 vs. しない派
昔は伊達締めはマストだったと思いますが、便利な着付けグッズが増え着崩れもしにくくなったので伊達締めしない派も増えてきているのではないでしょうか。
いくつか例をあげてみましたが、きっと細かい点も見ていくとまだまだ着付けの仕方って人によって全然違ったりすると思います。着物好きが集まれば、これだけでも1〜2時間は盛り上がって話していられそうですね。

衣紋の抜き具合もマチマチ
着付けの仕方はなぜ違うのか?本当はどれが正解か?
そもそも昭和初期くらいまで遡ると、着付け教室に行く人なんてほとんどいなかったと思います。着付けは親から教わるものであり、毎日着ていく中で自然と身につけていくものだったからです。着物が普段着だった時代には、着物は動きやすいよう「ゆったり」着て、着崩れてきたら都度直すのが一般的だったと言われているようです。
一方、現在の着付け教室で教えているやり方は、洋服が普段着になった時代のいわゆる「ハレ着」「オシャレ着」として着ることを前提としていますので、「きちんとした場できっちり見えるように」ということに重点を置いているように思います。「シワのない綺麗な着付け」が美しい着付けとして、ベルトや伊達締めで綺麗な状態をキープするやり方です。
そして最近のトレンドとして、半衿をたっぷり出す着方が流行るなど着付け教室で教わったこととは違う着方をする人が増えてきたように感じます。余談ですが半衿をたっぷり出すようになったのは、刺繍や色のある半衿が流行っているので少しでも多くカワイイ半衿を出したいというオシャレゴコロと、耳元からたっぷり半衿を出していると着物にファンデーションが付きづらく汚れにくいという実用面の2つの理由がありそうです。

半衿の出し具合もマチマチ
では、本当はどれが正解なのでしょうか?
「着物が普段着だった昔の人の着方が日本人として正しい着方」なのか、
「着付け教室で習うよそ行きのシワのない着付けが失礼がなく正しい着方」なのか、
「洋服と同じように和服もファッションで時代とともに移り変わるものなので、トレンドに合わせるのが恥ずかしくない着方」なのか
色んなご意見があると思いますのでここからは個人的な見解です。
まず、お食事やデート・観劇などのオシャレ着で着るには、もうこれはファッションとして最大限楽しむのが一番良いと思っています。少し前までの「着物=古臭い」イメージと違い、今は海外セレブも注目するファッションですし、古いものに新しいエキスを入れることで、そのもの自体が進化して行くのは着物に限らず万事に共通することですよね。これもまた余談ですが、先日ビヨンセがNBAの試合観戦にGUCCIがデザインした着物風のロングコートみたいなもの着て行って話題になりました。
女子たちのファッションへのあくなき探究心は侮れませんので(笑)、「ここをもっと開けたら絶対カワイイ」「着物にいつも使ってるこれ合わせたらカワイイ」と言いながら新しいファッションを生み出し、廃れつつあった着物の文化をも発展させてくれるのだと感じます。
一方で、着物は日本の大切な文化でもあるので、「古き良きスタイル」も大事に受け継いでいけるといいなと思います。例えば結婚式や子供のライフイベントなど「ここぞ」という時にはシワもなく外さない着付けで「品のある美しい日本人女性」を演出できると素敵ですよね。
着物が普段着でなくなった今、昔のような着方をそのまま受け継いでいくのは正直難しい気がしますが、キチンとした着付けを覚えつつ、ファッションとして新しいスタイルで着物を楽しんでいく両方ができると、着物はもっともっと楽しくポピュラーになっていくんじゃないかなと感じます。

ファッションとして着物を楽しむ
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